はじめに

深度合成を用いて撮影した昆虫をタイトル通り”ためつすがめつ”、様々な方向から掲載し紹介していきたいと思います。同定間違い、学名等の間違い、どんどんご指摘ください。今後ともよろしくお願い致します。

画像の無断使用はご遠慮願います

2017年12月18日月曜日

標本写真 2017.7.28① トウキョウムネビロオオキノコなど

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コガネムシ科 Scarabaeidae
ハナムグリ亜科 Cetoninae
カナブン族 Goliathini
(カナブン亜族 Goliathina)
カナブン
Pseudotorynorrhina japonica
 (Hope, 1841)
カナブンカナブン
カナブン
2015.6.21 撮影
 体長約27.5mm。原色日本甲虫図鑑第2巻ではアオカナブンなどと同じくRhomborhina属となっているが、後基節の違いなどから別属になっている。夏場の樹液の常連客。樹液が滴るその中に顔を突っ込んでどん欲に樹液を貪っている。樹液が出ている木で見つけないほうが難しいぐらいの普通種だが、色彩は変化に富んでいて見ていて飽きない。カナブンを漢字で書くと『金蚊』だそうだ。羽音がやたら大きいので、蚊に例えられたのだろうか。
【参考】
岡島秀治・荒谷邦雄(監修), 2012. 日本産コガネムシ上科標準図鑑. 学研教育出版, 東京.

カッコウムシ科 Cleridae
サビカッコウムシ亜科 Thaneroclerinae
ヨツモンチビカッコウムシ
Isoclerus pictus Lewis, 1892
ヨツモンチビカッコウムシ
 体長約3.0mm。キノコで得られたが、キノコを食べているわけではなく、キノコに集まる虫を捕食するプレデター。小さいながらも非常に美しい模様をしている。前脚跗節が広がっているのはすべり止めだろうか。なお、サビカッコウムシ亜科は独立科として扱われることもあるようだが、和文でそれに言及しているものが見つからないので、ここでは従来通りカッコウムシの1亜科としておく。
【参考】
黒沢良彦・久松定成・佐々治寛之(編),1985.  原色日本甲虫図鑑(III). 保育社, 大阪.

オオキスイムシ科 Helotidae
ヨツボシオオキスイ
Helota gemmata Gorham, 1874
ヨツボシオオキスイヨツボシオオキスイ

 体長約14.8mm。この個体は雌。雌雄二形で、雌は上翅先端が尖る。この科の昆虫は日本で3種しか確認されていないが、特にこの種に関しては、樹液によく集まるので簡単に見つかる。名前の通り、ヒラタムシ上科の昆虫としてはとても大きいと思う。かなり金属的な雰囲気があり、背面から見ると金属製に見えるが、腹は鮮やかな黄色で、そこだけ雰囲気が全く違う。
【参考】
黒沢良彦・久松定成・佐々治寛之(編), 1985.  原色日本甲虫図鑑(III). 保育社, 大阪.

オオキノコムシ科 Erotylidae
オオキノコムシ亜科 Erotylinae
トウキョウムネビロオオキノコ
Microsternus tokioensis  Nakane, 1961
トウキョウムネビロオオキノコトウキョウムネビロオオキノコ

 体長約4.1mm(1枚目)、3.8mm(2枚目)。腹面は1枚目と同一個体。美しいオオキノコムシ。ミイロムネビロオオキノコに似るが、斑紋パターンが異なる。原色図鑑ではまれとなっているが、多産する場所を発見した。2枚目はかなり黒化が進んだ個体で、まるで別種のように見えた。なお、原色図鑑に図版は載っておらず、検索表にしか記述がない。
【参考】
黒沢良彦・久松定成・佐々治寛之(編), 1985.  原色日本甲虫図鑑(III). 保育社, 大阪.

ケシキスイ科 Nitidulidae
ケシキスイ亜科 Nitidulinae
ケシキスイ族 Nitidulini
アミモンヒラタケシキスイ
Ussuriphia 
hilleri (Reitter, 1877)
アミモンヒラタケシキスイアミモンヒラタケシキスイ
 体長約3.9mm。原色図鑑ではキノコヒラタケシキスイと同じPhysoronia属だが、ケシキスイ類の研究者、久松定智博士のHPである『CLAVICORNIA』によれば、属が分離したようである。ケシキスイ科にはヒラタケシキスイ亜科があるが、そちらに属していないのでややこしい。キノコに来ると図鑑にはあるが、樹液で採ったような気もする。色合いは地味だが、網目模様がかっこいい。
【参考】
黒沢良彦・久松定成・佐々治寛之(編), 1985.  原色日本甲虫図鑑(III). 保育社, 大阪.
CLAVICORNIA https://sites.google.com/site/nipponnokeshikisui/ 2017.12.17 閲覧

ホソクチゾウムシ科 Apionidae
ホソクチゾウムシ亜科 Apioninae
Kalcapiini
ヒレルホソクチゾウムシ
Sergiola (Golovninia) hilleri (Schlisky, 1902)
ヒレルホソクチゾウムシヒレルホソクチゾウムシ
 体長約2.0mm(吻含まず)。原色図鑑ではホソクチゾウムシは皆一緒くたにApion属に放り込まれていたが、ゾウムシデータベースを見るとかなり細分化されたようだ。このホソクチゾウムシは全身が褐色の毛で覆われ、触角が赤っぽいことが特徴のようだ。似た仲間が多いが、その中では分かりやすい方ではないだろうか。
【参考】
林匡夫・森本桂・木元新作(編), 1984. 原色日本甲虫図鑑(IV). 保育社, 大阪.
日本産ゾウムシデータベース http://de05.digitalasia.chubu.ac.jp/ 2017.12.17 閲覧

2017年11月26日日曜日

標本写真 2017.5.5② ホンドニジゴミムシダマシなど

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ゴミムシダマシ科 Tenebrionidae


キノコゴミムシダマシ亜科 Diaperinae

キノコゴミムダマシ族 Diaperini
(キノコゴミムダマシ亜族 Diaperina)

ヒメナガニジゴミムシダマシ
Ceropria induta (Wiedemann, 1819)
ヒメナガニジゴミムシダマシ

ヒメナガニジゴミムシダマシ

   体長約11.7mm。以前は単に「ナガニジゴミムシダマシ」と呼ばれていた。この個体は図鑑に載っている体長の範囲より1mmほどおおきいようだ。朽ち木を見るとよくいる種ではあるが、普段はこの美しい姿を見せることはない。光をうまく当てることにより、名前通りの虹色の色彩を見せてくれる。同属の他種と形態がよく似ているが、この色彩の出方がそれぞれ全く違うので、簡単に区別できる。
(参考:日本産ゴミムシダマシ大図鑑)




ナガキマワリ亜科 Stenochiinae

ニジゴミムダマシ族 Cnodalonini

コツヤホソゴミムシダマシ
Menephilus lucens Marseul, 1876

コツヤホソゴミムシダマシ

コツヤホソゴミムシダマシ

コツヤホソゴミムシダマシ
2017.2.19 撮影

  体長約11.4mm。立ち枯れの樹皮下などで見つかる。そのような環境に生息するためか、体は扁平。樹皮下の住人としては大きめサイズな印象がある。これといった大きな特徴がないが、正方形に近い形をした前胸背板がかっこいいなと感じる。
(参考:日本産ゴミムシダマシ大図鑑)


ルリゴミムシダマシ
Derosphaerus subviolaceus (Motschulsky, 1860)
ルリゴミムシダマシ

ルリゴミムシダマシ


  体長約13.8mm。朽木を夜見れば、簡単に見つけることができるゴミムシダマシ。この種もヒメナガニジゴミムシダマシと同様、普通に見ただけだと真っ黒で地味である。しかし光をうまく当てることにより、妖しい紫色を見せてくれる。和名は瑠璃ではあるが、そのような色の個体を見たことはない。
(参考:日本産ゴミムシダマシ大図鑑)


ホンドニジゴミムシダマシ
Tetraphyllus paykullii (Dalman, 1823)
ホンドニジゴミムシダマシ

ホンドニジゴミムシダマシ

   体長約7.0mm。以前は単にニジゴミムシダマシと呼ばれていたが、南西諸島の別種(亜種から独立種となった)と区別するため、ホンドが頭にくっついたようだ。原色図鑑では種小名はlunuligerとなっているが、シノニム処理されたのだろうか。とにもかくにも美しい虫である。この種も光を当てないと真っ黒だが、極彩色の姿を隠している。比較的簡単に朽ち木などで見つかる。
(参考:日本産ゴミムシダマシ大図鑑)



ナガキマワリ族 Stenochiini

ヒメナガキマワリ
Strongylium impigrum Lewis, 1894
ヒメナガキマワリ

ヒメナガキマワリ

   体長約13.5mm。こちらも朽ち木の住人。今回は皆同じ環境で撮ったが、生態が違えば同じ亜科であっても随分と形態が変わるものだなあと感じる。この仲間は細長い体型をしており、脚や触角も細長い。このような体型だと、どのような環境に有利になるのだろうか。
(参考:日本産ゴミムシダマシ大図鑑)

2017年11月17日金曜日

標本写真 2017.5.5① メダカヒシベニボタルなど

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コガネムシ科 Scarabaeidae

ハナムグリ亜科 Cetoninae

ハナムグリ族 Cetoniini

クロハナムグリ
Glycyphana 
fulvistemma Motschulsky, 1860
クロハナムグリ

クロハナムグリ

クロハナムグリ
2014.7.6 撮影

   体長約16.3mm。初夏くらいから花に他のハナムグリ等と混じって見られる。数はめちゃくちゃ多いというわけではないが、黒くて大きめなのでよく目立つ。越冬をするということで晩秋にも見られるらしい。この個体は、夜間に材の隙間から発見した。寝ていたのか、はたまたまだ越冬をしていたのか…。表面は蝋状の物質で覆われ光沢がないそうだが、この個体は幾分それが落ちているように見える。
(参考:日本産コガネムシ上科標準図鑑)

ヒラタハナムグリ亜科 Valginae

ヒラタハナムグリ族 Valgini

ヒラタハナムグリ
Nipponovalgus angusticollis angusticollis (Waterhouse, 1875)
ヒラタハナムグリ

ヒラタハナムグリ

ヒラタハナムグリ
2015.4.26 撮影

   体長約6.3mm。亜種がトカラ列島にいる。名前の通り体が扁平なコガネムシ。全身が腹部も含め鱗片に覆われている。突起が割とたくさんあり、ごつごつした印象。また、腹端も大きく上翅からはみ出ている。花で見ることが多いが、朽ち木でもよく見かける。ちなみにNipponovalgus属は世界に2種で、2種とも日本にいるそうだ。
(参考:日本産コガネムシ上科標準図鑑)

コフキコガネ亜科 Melolonthinae

コフキコガネ族 Melolonthini
(クロコガネ亜族 Rhizotrogina)

コクロコガネ
Holotrichia  picea Waterhouse, 1875
コクロコガネ


コクロコガネ

   体長約17.3mm。晩春あたりから灯下によくやってくるコガネムシ。よく似た種がいくつかいるが、前胸背板の前縁に立毛があることや、艶、時期、体長などからこの種と判断した。背面から見ると面白い特徴はそんなにないなと思うのだが、腹面はライオンのたてがみのような毛でおおわれている。普段見向きをしない虫でも、しっかり見てみると面白い発見がるのではないだろうか。
(参考:日本産コガネムシ上科標準図鑑)


ベニボタル科 Lycidae

ヒシベニボタル亜科 Dictyopterinae

ヒシベニボタル族 Dictyopterini

メダカヒシベニボタル
Punicealis medvedevi (Kazantsev, 1990)


   体長約8.5mm。虫の名前にはしばしばメダカとつくものがいるが、当然魚のメダカは関係なく、目が高い=目が出っ張っているという意味で捉えればいいようだ。後脚の転節というあまり注目されないような場所に特徴があり、そこが長い。オスの先端部の内角は鋭く突出すると資料にあるが、これは雌雄どちらなのだろうか(調べた時にはオスだと思い込んでいたが、あまり自信が名なくなってきた)。なお学名についてはタイプ標本の問題があり、原色図鑑から変更があったようである。
(参考:松田潔 日本産ベニボタルの同定マニュアル さやばねN.S.)



コメツキムシ科 Elateridae

コメツキ亜科 Elaterinae

アカコメツキ属の一種
Ampedus sp.


   体長約9.5mm。この属の最普通種であるアカコメツキであろうと思っているのだが、この属は異様に種分化が進んでいるらしく1989年の昆虫目録の時点で82種が記録されている。それ以降もバンバン記載されていて、どんどん数が増えている。種の確認は雄交尾器を用いるのだが、問題はそこではなく、資料がないことである。いくら普通種であろうと思っても、他の種の可能性を排除するための資料(またはこの種だと断言できる資料)がないと結局同定できず、もやもやしてしまう。
(参考:原色日本甲虫図鑑第3巻)

2017年11月10日金曜日

標本写真 2017.10.4② カタモンチビオオキノコなど

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タマキノコムシ科 Leiodidae

タマキノコムシ亜科 Leiodinae

和名なし
Pseudocolenis hilleri Reitter, 1884
Pseudocolenis hilleri

   体長約2.1mm。多孔菌的なキノコを見るとたいてい採れる、タマキノコムシの中では会いやすいであろう種。和名なしとなっているが、これは分類上の混乱が原因で、原色図鑑の記述と異なっている。ことの顛末は甲虫ニュースに詳しい。上翅の横溝が密でほぼ無点刻(=この写真の種)がP.hilleriで、横溝がほどほどで明瞭な点刻があるものがP.grandisとのことなので、ここに記しておく。
(参考:原色日本甲虫図鑑第2巻、保科英人 日本産タマキノコムシ科 Pseudocolenis, Pseudoliodes 両属の分類学的諸問題 甲虫ニュース


オオキノコムシ科 Erotylidae


オオキノコムシ亜科 Erotylinae

タイショウオオキノコ
Episcapha morawitzi (Solsky, 1871)
タイショウオオキノコ

タイショウオオキノコ
2015.5.3 撮影


   体長約15.0mm。原色図鑑には対馬以外では稀との記述があるが、それとは裏腹に私が最もよく出会うオオキノコムシである。どうやらここ最近で急増しているらしい。ヒメオビオオキノコやミヤマオビオオキノコに似るが、複眼の間の幅などで判断できる。赤い紋は退色しやすいが、なかなか綺麗に残せたのではないだろうか。
(参考:原色日本甲虫図鑑第3巻

カタモンチビオオキノコ
Spondotriplax horioi Nakame et Nobuchi, 1955カタモンチビオオキノコ


   体長約3.4mm。触角の球棹節が5節のオオキノコムシ。原色図鑑にはキオビチビオオキノコの解説の下に少し記述があるだけなので、Twitterで教えてもらうまで全く気が付かなかった。幸い原記載が手に入ったので記述を見たところ、一致した。肩の紋が正方形に近くなるようだ。各所で記録があるようだが、図版や写真が示されているものがほとんどないようで、同定に苦労する種であった。
(参考:中根猛彦・野淵輝 日本産Spondotriplax属オオキノコムシの2新種 あきつ、原色日本甲虫図鑑第3巻


ホソチビオオキノコ
Triplax japonica japonica Crotch, 1873
ホソチビオオキノコ

ホソチビオオキノコ
2015.10.17 撮影

   体長約4.7mm。亜種が奄美大島と台湾にいるそうだ。このてのオオキノコは会いにくいものらしいが、この種は比較的見つけやすいのではないだろうか。属和名のナガチビオオキノコ属の示す通り、やや細長い体型をしている。この種に限らずオオキノコムシは下唇鬚の先端節が半月状になっているが、キノコを食べるうえで必要なのだからだろうか。
(参考:原色日本甲虫図鑑第3巻



ヒメハナムシ科 Phalacridae

ベニモンアシナガヒメハナムシ
Augasmus coronatus (Flach, 1889)
ベニモンアシナガヒメハナムシ

   体長約2.3mm。ヒメハナムシ科は微小で、さらに突起や派手な模様などがあるわけでもなく、虫好きにすら認知されているか怪しいグループだと思う。この種はたぶん普通種だが、ネット上でも画像が少ない。名前のアシナガはおそらく後脚胕節のことで、第1節がとても長い。触角の形もおもしろく、個人的にぜひ人気が出てほしいと思っている。なお、学名については2013年に出た論文に基づいて日本産のリストが作られており、それに従った。  体長約5.6mm。ハカワラタケのようなキノコを見ると大抵ぴょんぴょん跳ね回っている。
(参考:原色日本甲虫図鑑第3巻、吉富博之・亀澤洋 日本産ヒメハナムシ科の暫定リスト-Gimmel(2013)の紹介 さやばねN.S.



ナガクチキムシ科 Melandryidae

ナガクチキムシ亜科 Melandryinae

カバイロニセハナノミ
Orchesia ocularis Lewis, 1895
カバイロニセハナノミ

   ナガクチキの仲間の中でも、見つけるのは簡単な方であろう(資料にはナガクチキの採集難易度が載っているが、最も低くなっている)。やはり目を引くのが後脚の櫛状の棘であろう。これはいったい何に使うのか、キノコで暮らす上に役立つのか、ただのこけおどしなのか…考えるだけでワクワクする。
(参考:原色日本甲虫図鑑第3巻、水野弘造 ナガクチキ 昆虫と自然)