はじめに

深度合成を用いて撮影した昆虫をタイトル通り”ためつすがめつ”、様々な方向から掲載し紹介していきたいと思います。同定間違い、学名等の間違い、どんどんご指摘ください。今後ともよろしくお願い致します。

画像の無断使用はご遠慮願います

2020年1月19日日曜日

撮影機材 対物レンズを用いた撮影の内面反射防止

 私は主に微小昆虫を撮影する際、Mitutoyoの明視野用対物レンズ『M Plan Apo ×5』を使っている。これをトミーテックの『コ・ボーグ』にアダプタを介して付けている。この組み合わせは以下の本の中で高嶋清明さんによって紹介されており、手頃な価格と、入手が比較的簡単な物だけで対物レンズ撮影ができるオススメの組み合わせである。

日本自然科学写真協会(SSP)監修 『超拡大で虫と植物と鉱物を撮る―超拡大撮影の魅力と深度合成のテクニック』 文一総合出版 2017年



 超高倍率撮影をする際、一番手軽なのはCanonのMP-E 65mmだと思われる。下の二枚の写真は左が対物レンズ、右がMP-E 65mmの5倍での撮影である。ピントが合っている面を見ると、対物レンズのほうがよりはっきりとディテールを写し取っている(最近はLaowaのUltra Macroも超高倍率撮影ができるレンズとして発売されたが、持っていないので比較ができない)。

対物レンズで撮影MP-E65mmで撮影

 機材の準備も無理なくでき、素晴らしい解像度を見せてくれる対物レンズなのだが、実際に撮影してみると、なんだか眠たい写りになってしまうことが多々あった。上の写真でも分かるのだが、なんだか白っぽくなってしまうのだ。今までこのブログで掲載してきた写真の中にも、なんだか白っぽくなってぼんやりしてしまったものが多数ある。(例えばこのページのヤナギチビタマムシ、コゲチャホソクチゾウムシ、アカクチホソゾウムシ。画像編集で頑張ってみたものの、やはりどこかはっきりしない。)


 原因については、どうやら「内面反射」と呼ばれるものだということが友人に相談してみた結果分かった。私が理解したことで説明すると、レンズから取り込まれた余計な光がセンサーに行き着くまでに鏡筒内で乱反射し、その結果画像を白く曇らしてしまうようだ。
 この内面反射への対策をネットで調べてみると、

① 鏡筒内を反射を防ぐ塗料で黒く塗る
② 鏡筒内に反射を防ぐ素材を張り付ける

の二つの方法があることが分かった。今回は②の方法をとることにした。

 内面反射を防ぐ素材として今回使ったのが光陽オリエントジャパン株式会社の『ファインシャットsp』である。


ファインシャットsp

 画像左側の黒い部分が内面反射を防止する黒いシートである。びっくりするほど黒い。薄いシート状の素材で、裏面がシールになっているので、ハサミ等で必要なサイズを切り取り、コ・ボーグの内面に貼り付けた。下の画像は貼り付け前(右)と貼りつけ後(左)の比較である。左の部品も張り付け前は右の部品のような光の反射があったが、見事に抑えられている。
内面反射比較


 このシートの貼り付けを、貼りつけられるところすべてに行った。下の二枚の画像は貼りつけ前(左)と貼りつけ後(右)の鏡筒に、レンズ側から光を通したものである。角度が違うのがよくないが、光の反射をよく防いでいるのが分かると思う。


シート張り付け前シート張り付け後

 問題は、実際にどの程度撮影時に変化がみられるかである。結果は下の画像の通りで、驚くほどに差が出た。左が先ほども使用した画像で、対策なし、右が対策ありである。


内面反射対策なし内面反射対策あり

 内面反射対策を施したことによりコントラストが非常にはっきりとし、バシッと目が覚めるような写りになった。

 対物レンズで撮影をしようという人がそもそも少ないだろうし、例えば望遠レンズなどに接続すれば内面反射は起きないのかもしれない。この情報を役立ててくれる人がどれだけいるかは分からないが、何かの参考になったら幸いである。