はじめに

深度合成を用いて撮影した昆虫をタイトル通り”ためつすがめつ”、様々な方向から掲載し紹介していきたいと思います。同定間違い、学名等の間違い、どんどんご指摘ください。今後ともよろしくお願い致します。

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2018年2月17日土曜日

撮影機材 WeMacro rail

 深度合成撮影をする際、標本またはカメラを少しずつ動かす装置(微動装置)が必要となる。
今回私は『WeMacro rail』という装置を購入した。日本語で紹介されているホームページなどを知らないため、ここで紹介する。
 昆虫の標本写真に限らず、深度合成撮影をする方の参考になれば幸いである。
なお、深度合成撮影自体については以下に詳しいので参照されたい。

丸山宗利『小型昆虫の深度合成撮影法』月刊むしNo.473 2010年7月号
日本自然科学写真協会(SSP)監修 『超拡大で虫と植物と鉱物を撮る―超拡大撮影の魅力と深度合成のテクニック』 文一総合出版 2017年

1 wemacro railとは

 WeMacro railは、自動微動撮影装置の一つである。WeMacro社(中国)のサイト
http://www.wemacro.com
より購入できる。大きな特徴としては、スマートフォン(iPhone及びAndroid)で制動ができる。
 自動微動撮影装置を簡単に説明すると、決められた範囲を、決められた間隔でレールが移動する。それにカメラが連動し、自動でシャッターを切るというものである。手動では煩わしく、また気を使う作業を自動で行えることにより、写真撮影の負担が大幅に減ることになる。
 類似の商品として、Cognisis社のstackshotがある。こちらは制動に特製のコントロールユニットを用いる。また、撮影方式もWeMacro railより多いようだ。
 両者の最たる差は価格にある。WeM acro railは、stackshotの半額以下(2018年2月現在)で購入できる。

2 購入方法

 WeMacro 社のHPより購入できる。
MENU → Extream Macro shop →WeMacro rail and accessories と進み、

WeMacro rail (100mm type,with battery box for outside)を選ぶ。

 ここでは2つ購入者が選択をする箇所がある。
  1 shutter cable
   装置とカメラを結ぶケーブルである。使用する機種に対応するものを選ぶ。
  2 power supply
   電源プラグ(コンセント)である。これは日本と共通規格であるUSを選択する。

   変圧器などを用意する必要はない。
 その他、撮影に役立つアイテムが多数販売されているので、必要に応じて購入すればよいであろう。
 支払いはクレジットカード又はPayPalである。

3 セット内容及び設置方法

 以下の説明書を参照。
http://www.wemacro.com/wp/wp-content/uploads/quickguidev1.3.pdf
 セット内容としては、これに充電式のモバイルバッテリーがつく。
私は今のところ三脚に設置しているが、コピースタンドに設置した方が安定性がありよいかもしれない。



4 スマートフォンからの制動

 WeMacro railの大きな特徴である、スマートフォンからの制動を説明する。私はiPhoneユーザーなので、iPhone (iOS11.2.5)を例にし説明する。
 まず、専用アプリ(WeMacro)をダウンロードし、インストールする。
 コントロールボックスとスマートフォンをBluetooth接続すれば、アプリを通してスマートフォンで制動が可能になる。
 アプリはシンプルで、二つの画面から構成される。以下、一つずつ項目を解説する。

画面1(設定画面)

 2つの撮影モードがある(⑥で切り替える)。なお、1um=1μm=0.001mmである。


 ①WeMacro settings
 設定の読み込み及び保存。ロードとセーブ。メニューには3つの項目がある。
 Load:保存した設定を読み込む。
 Save:上書き保存。現在の設定に新しい値を入力し、更新する。
 Save as:新規保存。新しく入力した値を、新規の設定として保存する。

     名前をつけるが、最後に拡張子の.wsを忘れずにつける必要がある。

 ②Settle time
 シャッターを切ってから装置が移動するまでの時間。

 ③Shutter per step
 そのステップでシャッターを切る回数。

 ④Interval of shutters
 シャッターを切る間隔。シャッターを切る回数が1回のときは、①と③の合計が次のシャッターを切るまでの時間となる。

 ⑤Backlash
 直訳すると反動であるが、どの挙動を制御するか判然としない。私は初期値から変更していない。

 ⑥Run mode
 撮影方式を以下の2つから選択する。
 distance:始点を設定し、設定した距離を設定したステップ(微動)回数で等間隔に撮影していく方式。
 start to end:始点と終点を設定し、その間を設定した間隔で撮影していく方式。

 ⑦Step length
 1回のステップで動く距離。以下の2つのモードがある。
 mm(fast):最小移動距離1mm。高速でレール上のカメラを動かす。主に始点や終点を指定する際に使う。作動音が大きい。
 um(slow):最小移動距離0.001mm。低速でレール上のカメラを動かす。主に撮影の時に使う。作動音は小さい。

 ⑧Total distance
 始点から終点までの距離(distanceモード時のみ)。

 ⑨Total step
 始点から終点までのステップ回数(distanceモード時のみ)。

 ⑩When finished
 beep:撮影終了時に音で知らせる。
 return:撮影終了時に始点までカメラを戻す。

 ⑪Confirm:設定の適用。これを押さないと、設定した値で動かない。

画面2(制動画面)


 以下①〜④は、画面1の⑦で設定したモード及び値で動く。

 ①Step backward
 1ステップ分カメラを後退させる。

 ②Step forward
 1ステップ分カメラを前進させる。

 ③Backward
 ボタンを押している間、カメラを後退させる。

 ④Forward
 ボタンを押している間、カメラを前進させる。

 ⑤As start / As end
 As start:始点を指定する。撮影は進行方向から見て後方からしかできない(Forwardの動き)ため、注意する。
 As end:As startを押すとこちらに表示が変わる。終点を指定する。

 ⑥Calibrate
 始点と終点を設定した後に押すと、撮影距離、ステップ回数、必要時間が下に表示される。

 Run/Stop
 Run:撮影を開始する。
 Stop:Runを押すと表示が赤くなり、こちらに変わる。押すと一時停止をする。再度Runに表示が変わるので、もう一度押すと、その場から再作動する。

⑧Shutter
その場でカメラのシャッターを切る。レリーズと同じ役割。

5 実際の撮影(start to endモード)

 ここでは、私の撮影方を順を追って説明する。実際の撮影の雰囲気を感じて頂きたい。なお、カメラはCanon Eos 70Dを使用している。
 ①各種機器の電源を入れる。
 ②カメラはライブビュー撮影モードにする。標本の位置を調整したり、始点終点の設定はカメラのモニターで確認する。
 ③撮影後の画像確認をoffにする。onにした場合、画像確認から撮影画面に戻るためにシャッターの信号が使われ、2ステップに1回しか撮影されない。
 ④標本をセットする。
 ⑤アプリを開き、画面1のStep lengthをmm(fast)に設定(値は何でも良い)し、Confirmを押す。
 ⑥画面2にし、Forward又はBackwardを押し、始点の大まかな位置と標本の位置の調整を行う。この際、必ず始点を進行方向からみて後方に設定する。
 ⑦画面1にし、設定を入力、またはLoadする。Step lengthをum(slow)にするのを忘れない。Confirmを押す。
 ⑧画面2にし、始点の微調整をし、As startを押す。この際私は、全体がボケる程度の場所を始点にする。
 ⑨Forward又はStep forwardで場所を調整し、終点を指定する。行きすぎた場合はBackward又はStep backwardで戻る。この際も私は、全体がボケる程度のところを終点とする。
 ⑩Calibrateを押し、Runを押す。
 ⑪撮影が終わったら画像を確認する。特に最初と最後に合成に必要のない写真があれば消去する。

以上が流れである。慣れればすぐに準備ができるようになるであろう。
一度導入してしまえば、その後の撮影が大幅に簡単になる。ぜひ使って頂きたい。

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