はじめに

深度合成を用いて撮影した昆虫をタイトル通り”ためつすがめつ”、様々な方向から掲載し紹介していきたいと思います。同定間違い、学名等の間違い、どんどんご指摘ください。今後ともよろしくお願い致します。また、採集記も始めてみました。拙い文ではありますが、ぜひご笑覧ください。

掲載昆虫一覧

画像の無断使用はご遠慮願います

2017年3月21日火曜日

採集記 2017.2.26 岐阜県MT森②

本日の虫

コウチュウ目
オサムシ科
ヒメツヤゴモクムシ? Trichotichnus congruus?
クロチビカワゴミムシ Tachyta nana
ハネカクシ科
ハスオビキノコハネカクシ? Lordithon irregularis?
アカモンヒラタハネカクシ(ニセヒラタハネカクシ) Siagonium haroldi
オオキノコムシ科
タイショウオオキノコ Episcapha morawitzi
ホソヒラタムシ科
ヒメヒラタムシ Uleiota arboreus
ヒゲナガゾウムシ科
カオジロヒゲナガゾウムシ Sphinctotropis laxus
オトシブミ科
エゴツルクビオトシブミ Cycnotrachelus roelufusi

ハチ目
アリ科
シベリアカタアリ Dolichorderus sibiricus
テラニシシリアゲアリ Crematogaster teranishii

   前回の続き。アカマツの枯木以外の虫を記す。

   まずは、積んであった木の皮を剥がし、2種のハネカクシを確認した。
ハスオビキノコハネカクシ? Lordithon irregularis?
   とても色鮮やかで美しいハネカクシだったが、シャッターを切った次の瞬間には姿を消していた。撮影と採集、両方はなかなかうまくいかないものである。顕著な模様があるが、ハネカクシは捕まえても同定できないものが多いため、?付きとしておく。

   別の木の皮を剥がすと、また新たなハネカクシが現れた。
アカモンヒラタハネカクシ Siagonium haroldi
アカモンヒラタハネカクシ Siagonium haroldi
   特徴的な長い触角や扁平な翅から、ハネカクシとしては同定が難しくない…と思わせて大きな落とし穴がある虫である。2013年に出された『日本産ハネカクシ科総目録』により、従来のニセヒラタハネカクシからアカモンヒラタハネカクシに和名が変わった。ここまではよいのだが、原色日本甲虫図鑑第2巻にはニセヒラタハネカクシが載っておらず、ヒラタハネカクシしかない。この2種は酷似しているようだが、生息域が異なり、ヒラタハネカクシは北海道のみ、本州以南はニセヒラタ(アカモン)となるようだ。見た目での区別点が分からないので、私では生息域で判断するしかないだろう。

   また同じ場所からは、個人的に意外な虫が出た。
カオジロヒゲナガゾウムシ Sphinctotropis laxus
   5、6月にはよく見るが、越冬をしているものは初めて見つけた。何回見ても飽きない面白い顔をしている。

   この後はしばらくアカマツの枯木を調べていた。そして再び場所を変え、まずは細い立ち枯れの樹皮を剥がした。

   まず現れたのは、オトシブミであった。
エゴツルクビオトシブミ♂ Cycnotrachelus roelufusi
   こんなに長い首をしているのはオスだけで、メスは首が短い。5,6月くらいによく葉っぱを巻いているのを見かける。オトシブミも越冬をするのだと初めて知った。


   オトシブミのいた場所のちょうど真裏辺りからは、アリが出てきた。今まで見たことのある中で、一番お気に入りのアリだ。
シベリアカタアリ Dolichorderus sibiricus
シベリアカタアリ Dolichorderus sibiricus
   名前の通り、硬い。アリの群れの上に手を置いてみたが、甲虫のような感じがした。なお、カタアリ亜科は日本に数種いるが、本当に硬いのはこのアリだけのようである。黒と茶色のツートンカラーに、アリにしては珍しく腹に白っぽい紋が入っている。これは内臓が透けているらしい。自らの臓物をおしゃれにみせるとはさすがである(?)。2枚目の写真は、以前撮影したもの。

   少し場所を変え、新旧様々な材が積んである場所で手ごろな木の皮を剥がした。

   まず現れたのはこのゴモクムシであった。
ヒメツヤゴモクムシ♀? Trichotichnus congruus?
   この手の虫は似たものが多く、種まで行き着かないことを覚悟で調べた。特にメスであったために使える情報もオスほどないのがつらい。しかしなんとか、この種ではないかと結論付けた。近似種がいるようなので、疑問符付きとしておく。

   ゴモクムシのすぐそばからは、個人的にはMT森の主だと思っているこの虫が現れた。
タイショウオオキノコ Episcapha morawitzi
   図鑑や様々な昆虫関係のサイトやブログでは少ないとされており、なぜかWikipediaにも個別記事まであるが、MT森では異常に多い。見ないことはまずないというくらいにいる。『岐阜県昆虫目録第3巻』によれば、近年東海地方を中心に記録が増えているそうだ。
タイショウオオキノコの頭部
   ヒメオビオオキノコやミヤマオビオオキノコと同じ模様でよく似ているが、タイショウオオキノコはこの2種よりも明らかに複眼の間が広い、言い換えればおでこが広いのが特徴だそうだ(具体的には複眼の間が、複眼の幅の3.5倍程度)。また、背面が完全に無毛なのも特徴である。三種そろえたら、ぜひ比較写真を載せたい。
   私にとってはごく身近でありふれた虫であるのだが、人によっては見ることが難しいということもあると思う。人によって出会える虫が違う、そういうところが虫の面白さの一つだと思っている。

   少し移動したところの材からは、先ほどとは別のアリが出た。

テラニシシリアゲアリ Crematogaster teranishii
テラニシシリアゲアリ Crematogaster teranishii
   腹柄節の特徴的な付き方から、すぐにシリアゲアリの仲間だと分かった。ハリブトシリアゲアリと似ているが、テラニシと判断した。群の写真では卵か幼虫かをくわえているのが見える。しかし、この写真に写っているのがほぼ全ての群の構成員のように感じた。女王やほかの子供はいないのだろうか。それとも見落としだろうか。

   別の木の皮の下からは、樹皮下の生活に適応した虫が出てきた。
ヒメヒラタムシ Uleiota arboreus
   木の隙間で生活できるように体を扁平に進化させた虫である。越冬も木の皮のしただが、それ以前にいつでも木の皮の下にいるようだ。なぜかこの虫は見た目が得意ではない。なんとなく、苦手なのだ。ちなみに、以前はヒラタムシ科として扱われていたが、現在はホソヒラタムシ科の一種として扱われているそうだ。

   最後は以前も登場したクロチビカワゴミムシが出てきたので、深度合成写真を。
クロチビカワゴミムシ Tachyta nana
   触角も折れているし、あまりいい写真ではないが、普通種なのにろくな写真もネット上にないのであげておく。普通種だろうが地味だろうが、どんな虫にも注目していきたい。

2017年3月5日日曜日

採集記 2017.2.26 岐阜県MT森① 松の枯木編

本日の虫
ゴキブリ目
オオゴキブリ科
オオゴキブリ Panesthia angustipennis

コウチュウ目
コメツキムシ科
フタモンウバタマコメツキ Cryptalaus larvatus pini
コクヌスト科
オオコクヌスト Trogossita japonica
ゴミムシダマシ科
ヒコサンエグリゴミムシダマシ(ヒコサンヨツコブゴミムシダマシ) Uloma hikosana
コツヤホソゴミムシダマシ Menephilus lucens
ゾウムシ科
マツオオキクイゾウムシ Macrorhyncolus crassiusculus 

   この日はMT森へ行く予定ではなかったが、別ポイントでは虫を見つけにくいと思いMT森へ向かった。種数は多くないが文章量が多くなりそうなので二分割する。まずは松の樹皮下から発見した虫を記す。

   MT森には松林(おそらくアカマツ)が広がる場所がある。そこでは松の生木はもちろん、枯木や伐採木も多い。伐採木の樹皮下からはこのキクイゾウムシが多数現れた。
マツオオキクイゾウムシ Macrorhyncolus crassiusculus
   キクイゾウムシ類は同定が難しいが、『原色日本甲虫図鑑第4巻』で当たりをつけ、ネット上で公開されている『キクイゾウムシ類概説』(こちら。IIIIII)で逆引き検索をし確認した。本種で間違いないと思うが、解説に「近似の別種が琉球にあと1~3種いるが今のところ標本が少なくて正確に同定できない」とある。本州のものではあるが、最近の研究ではどうであるか気になるところである。

   ここからは松の立ち枯れを調べた。皮が簡単に剥がれる立ち枯れがいくつかあったので、数本めくってみた。
   まず現れたのは、このゴミムシダマシであった。
コツヤホソゴミムシダマシ Menephilus lucens
   いわゆる「普通種」であり、見た目にも際立った特徴はあげづらい。図鑑や昆虫をとりあげているサイトを見ても情報はあまりない。岐阜県の記録も少ない。スルーされる存在なのだろう。専門知識がない私が魅力をアピールできないのが口惜しいが、とりあえず、「前胸背板かっこいい!」と言っておく。

   この日、どの松からも出てきたのがオオコクヌストだった。
オオコクヌスト Trogossita japonica
   見た目はクワガタに似ていなくもないが、大腮はまるでニッパーみたいに太短く、噛まれたらとても痛そうだ。材を食べるキクイムシの幼虫などを捕食する。地味と言えば地味だが、こういう無骨な感じがする虫は好きだ。

   次に、日本最大級のコメツキムシであるフタモンウバタマコメツキを見つけた。
フタモンウバタマコメツキ Cryptalaus larvatus pini
   少ない場所もあるようだが、この場所では普通に見つかる。越冬状態でも跳ねるのかなと思いひっくり返しおいたら、パチンと跳ねてどこかへ消えてしまった。
   この種であるが、名前の頭に"オオ"が付くか否かで混乱があるようだ。オオフタモンウバタマコメツキは南西諸島南部から東南アジアに生息する原名亜種(C. larvatus larvatus)で、本土に生息するのは固有亜種のフタモンウバタマコメツキ(C. l. pini)というのが正しいようだ(このブログに詳しく説明されていた)。

   前回も朽木から現れたエグリゴミムシダマシの仲間は、集団越冬をしていた。
ヒコサンエグリゴミムシダマシ Uloma hikosana
   「どうせただのマルセエグリゴミムシダマシ(エグリゴミムシダマシ)だろう」と思い、適当に採集した。その際、メスを落としたらしく後悔する羽目になった。
   一応ちゃんと同定してみようと思い、まずは採集したオスの体長を測ると約9mmだった。これはマルセより若干大きい。本州のUloma属は5種が知られており、このように赤褐色なのはマルセと、若干大型のヒコサンのみである。2種を正確に同定するためには、”舌状突起の毛束の有無”を見ればよいらしい。毛束があればヒコサン、なければマルセである。
ヒコサンエグリゴミムシダマシの舌状突起(赤丸内)
   非常に毛が短いうえに、毛の色も体色に近く確認しづらい。MP-E65mmの最大倍率で撮影してみても満足いく写真は撮れなかったが、一応毛束があることは分かった。念には念をということで、交尾器でも確認をすることにした。
ヒコサンエグリゴミムシダマシ オス交尾器
  『日本産ゴミムシダマシ大図鑑』には交尾器の図版はないが、幸いにもネット上に日本・韓国及び台湾のUloma属のレヴィジョンのpdfこちらがあり、そこでヒコサンU. hikosana)とマルセ(U. marseuli)のオス交尾期の図版を見比べた。結果、ヒコサンには似ているがマルセとは異なるという結論を得ることができ、安心した。ヒコサンはマルセより珍しいようだが、もしかしたら多くのヒコサンが今まで見落とされているのかもしれない。

   このあとしばらく松以外で採集をし、帰り際にまた一本松の立ち枯れを見つけたので皮をめくってみた。
オオゴキブリ Panesthia angustipennis
   隣接する愛知県では準絶滅危惧、石川県では絶滅危惧Ⅱ類になっている。この種が居るということは『豊かな森の証』とよく紹介されている。非常に堂々とした、どこか威厳すら感じる姿である。どうやらオオゴキブリはお互いの翅をかじることが多く、綺麗な姿はなかなか見られないらしい。しかし、この個体は一頭で越冬していたのか、傷一つない姿だった。最後に美しい虫に出会えたことが嬉しかった。

2017年2月24日金曜日

採集記 2017.2.19 岐阜県MT森

 深度合成写真だけではなく、虫にかかわるあれこれも(主に自分の覚書として)残したいと思い、まずは採集記を付けることにしました。

本日の虫
ハサミムシ目
マルムネハサミムシ科
ヒゲジロハサミムシ Anisolabella marginalis

カメムシ目
カメムシ科
チャバネアオカメムシ Plautia stali

コウチュウ目
オサムシ科
クロチビカワゴミムシ Tachyta nana
ハネカクシ科
ハネカクシ科sp.
エグリチイロアリヅカムシ Batristilbus politus
ツツキノコムシ科
ケナガナガツツキノコ Nipponocis longisetosus
ゴミムシダマシ科
ホンドクロオオクチキムシ(オオクチキムシ) Allecula fuliginosa
モトヨツコブエグリゴミムシダマシ(モトヨツコブゴミムシダマシ)Uloma bonzica
コブゴミムシダマシ科
ツヤナガヒラタホソカタムシ Penhelispa vilis 
ハムシ科
ガガブタネクイハムシ Donacia lenzi
ジュンサイハムシ Galerucella nipponensis

ハチ目
アリ科
ナカスジハリアリ? Brachyponera nakasujii?
ハヤシケアリ? Lasius hayashi?

 まずMT森について。現在の私のメインフィールドの1つである。自然公園といった趣で、遊歩道が整備され、里山的環境が整備されている。広葉樹林、杉林、松林が混じりあい、場所によって森の姿はめまぐるしく変わる。遊歩道沿いや広場などの枯木、樹液の出る木(スズメバチのせいであろう)は積極的に伐採されるが、伐採された木はその場に置かれることが多く、倒木を利用する昆虫もよく見られる。
昨年まで樹液を出していた木。今後は倒木を利用する昆虫が見られるであろう
   また、水場環境としては2つのため池とそれに注ぐ大小の沢がある。更に特筆すべき点として、小さいながらも湿原が存在している。一箇所は公園内を走る林道に面しており、灯火採集も可能である。
 標高は高くはないが、よい環境が多くみられる場所だ。犬の散歩に来る人も多いので、落とし物もあるかもしれない。

 今回は冬の晴れ間の採集であった。そのため、越冬している昆虫を狙った。まず発見したのは、このツツキノコムシである。
ケナガナガツツキノコ♀ Nipponocis longisetosus
   ツツキノコムシは公開されている甲虫ニュースの検索表で調べたが、メスだったため途中で行き詰まっ た。しかし、3.5ミリほどの体長と、ハカワラタケを食性とすることから同定できた。少ない種とされている。
   もろい虫なのか、標本にしようとすると一頭はすぐバラバラになり、もう一頭も脚が2本しか残らなかった。悲しい。

 駐車場に近いため池のすぐそばまで行った。水の間際まで木が生えている場所がある。そこにアカマツの立ち枯れがあったので皮をめくってみると、ジュンサイハムシが2頭くっついていた。
ジュンサイハムシ Galerucella nipponensis
   ジュンサイハムシは名前の通り、水生植物のジュンサイやヒシを食べる。周りの木も見たが、このハムシの翅がいくつか見られた。ジュンサイハムシで調べると、生態に関する論文がネット上に見つかった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjeez/23/4/23_173/_pdf
   考察の中に、『10月中旬に湖岸の枯れたヨシ原の中下層部分に本種の成虫を確認しており,本種の越冬場所であ る可能性が強く推察される 』とあったが、水際の枯木の樹皮下でも越冬するようだ。

また、同じ立ち枯れから、またも水辺のハムシが姿を現した。
ガガブタネクイハムシ♀ Donacia lenzi
   ネクイハムシの仲間は初見だった。そもそも越冬するものだとも知らなかった。ガガブタネクイハムシは岐阜県昆虫目録ではわずか一つの記録のみしかないが、そう珍しいものではないそうだ。ちなみにガガブタを食べるかどうかは怪しいらしい。
   この2種のハムシはどちらもジュンサイを食草の一つとしているそうだ。調べると、やはりここのため池にはジュンサイが生えていることが分かった。

   それから少し離れ、枯れた枝の樹皮をはぎ取るとこのカメムシが現れた。
チャバネアオカメムシ Plautia stali
   よく見る種であるが、普通は茶色いのは翅の革質部だけで、あとは緑色である。越冬するカメムシには茶色く変色するものがいるので、この種もそうなのだろうか。よく見ると宇治金時みたいなおいしそうなまだら模様をしている。なお、エサキモンキカメムシも多数越冬していたがスルーした。

   同じく枯れ枝の樹皮下から、クチキムシも出てきた。
ホンドクロオオクチキ♂ Allecula fuliginosa
   従来オオクチキムシと呼ばれていたものが、2016年刊の『日本産ゴミムシダマシ大図鑑』でホンドクロオオクチキムシと和名を改められた。朽木や樹皮下を見ているとよく見られる虫である。見た目が似たもので稀な種がいるため、一応交尾器も見たが間違いなかった。残念。


   少なくとも3年は積んである伐採木を見た。キノコも多数生えている。そこではアリを得た。
ナカスジハリアリ? Brachyponera nakasujii?
   数は多くなかったので、巣の本体は別にあるのかもしれない。しかしアリの同定は難しい。まったく合っている気がしない。一応ハリアリの仲間だろうという結論に至ったが、最後に大きな難関が。従来オオハリアリとされてきたものの中に2種のアリが混じっているというのだ。見た目はほぼ同じで、外見上は本当に微妙な違いしかない。生息環境も考慮しこちらの種かなと思ったが、重ね重ね自信がない。

 ここで一旦休憩をとった。冬の採集はサクサクいかないが、ネクイハムシを得ていたのですでに満足感はあった。

 休憩後は2つ目のため池の脇に広がる広場で採集をした。昨年多くの虫を得た立ち枯れは伐採されていたが、近くに伐採木が置いてあったので一安心。
 近くを見回すと、サクラの伐採木があった。ほどよく柔らかく、これは虫がいるなと思わせるものであった。計5本転がっていた。
サクラの伐採木。樹皮をめくっている
   その予感は当たり、中からまずホソカタムシを得た。
ツヤナガヒラタホソカタムシ Penhelispa vilis 
   ホソカタムシ類は現在、ムキヒゲホソカタムシ科とコブゴミムシダマシ科に分類されている。後者はさらにコブゴミムシ亜科とホソカタムシ亜科に分類され、多くのホソカタムシは後者に入る。しかし、この種はコブゴミムシ亜科である。分類とは難しいものなのだなあと思う。
   虫自体の感想は、無骨でがっちりしたフォルムにもかかわらず、色合いが紫ががった茶色でなんともエレガント。質実剛健さと優美さを併せ持つ素晴らしい虫だと思う。

   微小で肉眼ではよく分からない、小さなハネカクシも捕まえた。
ハネカクシ科sp.
   もはや同定できる方がおかしいレベルの虫だが、もちろん捕獲した。ほかの木からも同種か分からないが得ている。…はずだが、確認すると一頭になっていた。どうやら次元の狭間に飲み込まれたらしい。
   小さい、もろい、いつのまにか腹端がひっこんでいる、そもそも同定できない、亜科すらよく分からない。こんな虫を好き好んで集めて綺麗に展足して同定している人は頭がおかしい(最大級の賛辞)。

   木を転がすと、シロアリの群れが現れた。ヤマトシロアリだと思われる。ほかの昆虫が混じっていないか探したが、見つからなかった。
   2本目の木の皮をめくると、まずヒゲジロハサミムシが現れた。
ヒゲジロハサミムシ Anisolabella marginalis
   森の中ではよく見られる。シロアリを食べるため、ここに居たのも納得。当然この木にもシロアリの巣があった。

   同じ木から、ゴミムシダマシも落ちてきた。
モトヨツコブエグリゴミムシダマシ♂ Uloma bonzica
   似たものがいて紛らわしいが、『ゴミムシダマシ大図鑑』を見ながらなんとか同定。どうやらモトヨツコブエグリゴミムシダマシ(これもゴミムシダマシ大図鑑でモトヨツコブゴミムシダマシから微妙に名前が変わった)でよさそうだ。よく見かけるやつである。

   3本目の木からはまず、この小さなゴミムシが多数得られた。
クロチビカワゴミムシ Tachyta nana
   極小で、肉眼ではゴミムシと認識できなかった。小さい、黒い、人目につかない、形も普通。おそらくゴミムシ屋さんですら特別な注意を払わないような虫ではないだろうか。おそらく普通種だが、ネットで調べると名前以外の情報はほぼ引き出せない。
   ミズギワゴミムシの仲間だが、水辺ではなく、伐採木の樹皮下に生息する。今回見つけた木では樹皮下の師部がまるでスポンジのように柔らかく、水分を多量に含んでいた。このような木の樹皮下にしかいないのだろうか。

   この木をゴロンと転がし、皮をはぎ取ると、黒と白の混ざった固まりが現れ、動いている。よく見ると、アリの巣であった。黒いものはアリで、白いものは幼虫であった。
ハヤシケアリ? Lasius hayashi?
   やはりアリの同定は難しいのだが、これは合っているのではないかと思っている。それは、ハヤシケアリの巣に居候する別の虫が見つかったからである。

   いくつかアリを捕獲しながら、中に別の虫は居ないか注意深く探した。すると、居た。
エグリチイロアリヅカムシ Batristilbus politus
   一頭だけ現れた。ハヤシケアリが朽ち木中に作る巣に居るとされ、状況的にもぴったしである。艶々とし美しく、本日1番の喜びであった。
   このあとケヤキの樹皮もめくってみたがフサヤスデがいるばかりであり、時間が来たので帰ることとした。得た虫は多くはないが、充実感のある採集であった。

  なお、エグリチイロアリヅカムシは展足の過程で無残な姿になったことをここに戒めとして記す。

2016年12月15日木曜日

セイヨウミツバチ


目 Order ハチ目 Hymenoptera
亜目 Suborder ハチ亜目(有剣類) Apocrita(Aculeata)
上科 Superfamily ミツバチ上科 Apoidea
科 Family ミツバチ科 Apidae
亜科 Subfamily ミツバチ亜科 Apinae
族 Tribe Apini
属・種 genus,species Apis (Apis) melifera Linnaeus, 1758
セイヨウミツバチ Apis (Apis) melifera Linnaeus, 1758-1-1
セイヨウミツバチ Apis (Apis) melifera Linnaeus, 1758-2-2
セイヨウミツバチ Apis (Apis) melifera Linnaeus, 1758-3-3

 10月30日採集。体長12-14mm(働き蜂)、15-20mm(女王)、15-17mm(オス)。分類についてはハナバチ類をまとめてミツバチ科とする考えがあるそうだが、『日本産ハナバチ図鑑』と『The Bee of the World』を参考にした。おそらく人類と最もかかわりが深い昆虫。ハチミツの生産だけでなく、様々な植物の受粉を行う。もともとはヨーロッパなどが原産だが、もはや世界中で見られるようだ。日本には固有種のニホンミツバチがおり、黒っぽいのと、翅に違いがある。同じ日に同じ場所で採れているので、そちらも写真を挙げ、比較したい。(実家で捕まえたんだけど、たまにハチミツをもらう。もしかして、その生産者の可能性が)。

2016年12月3日土曜日

オオクロカメムシ


目 Order カメムシ目 Hemiptera
亜目 Suborder カメムシ亜目 Heteroptera
上科 Superfamily カメムシ上科 Pentatomoidea
科 Family カメムシ科 Pentatomidae
亜科 Subfamily クロカメムシ亜科 Podopinae
族 Tribe
属・種 genus,species Scotinophara horvathi Distant, 1883
オオクロカメムシ Scotinophara horvathi Distant, 1883-4-4
オオクロカメムシ Scotinophara horvathi Distant, 1883-1-1
オオクロカメムシ Scotinophara horvathi Distant, 1883-3-3
オオクロカメムシ Scotinophara horvathi Distant, 1883-2-2


   9月4日採集。体長8-10mm。同属のイネクロカメムシに似るが、顔の先端が凹状なのがこの種の特徴らしい。田んぼに囲まれたコンビニの明かりに来ていたので、イネに寄生するのかと思ったら、アシなどの植物に寄生するそうだ。水生植物に住んでいるから、泥で体が汚れている(綺麗にできなかった言い訳)。全身が細かい黄土色の毛で囲まれているが、腹部にはないようだ。前胸背板と頭部には棘がついていて、いかつい。一瞬、翅はどこだろうと思ってしまうが、腹端の方をみるとしっかり膜質部がはみ出している。巨大な小楯板によって隠されているようだ。マルカメムシやツノゼミなど、カメムシ目には巨大な小楯板(大楯板とい言ってもいいかも)を持つものが割といるようだ。

2016年11月26日土曜日

マダラチビコメツキ


目 Order コウチュウ目 Coleoptera
亜目 Suborder カブトムシ亜目 Polyphaga
上科 Superfamily コメツキムシ上科 Elateroidea
科 Family コメツキムシ科 Elateridae
亜科 Subfamily サビキコリ亜科 Agrypninae
族 Tribe チビコメツキ族 Oophorini
属・種 genus,species Prodrasterius agnatus (Candèze, 1873)
マダラチビコメツキ Prodrasterius agnatus (Candèze, 1873)-4-4
マダラチビコメツキ Prodrasterius agnatus (Candèze, 1873)-1-1
マダラチビコメツキ Prodrasterius agnatus (Candèze, 1873)-3-3
マダラチビコメツキ Prodrasterius agnatus (Candèze, 1873)-2-2

   10月12日採集。体長4-5.5mm。職場の花壇で拾った小さなコメツキムシ。荒地や畑によく見られるそうで、あまり季節も問わないという、ごくごく身近に居る虫だ(その存在が認知されているかは別として)。虫に興味がない人には気づきさえされず、虫好きな人にも「普通種だし…」と思われているような虫かもしれない。しかし、よくよく見てみると面白いと思う。まず前胸がでかい。それだけでかっこいい。ひっくり返してみると大きな日本の溝があったり、コメツキムシの飛び跳ねるための構造が見えたりして興味深い。模様も面白い。変異があり、真っ黒に近いものもいるようだが、この個体はいくつかの黒いラインが走っている。コメツキムシは模様があるものが少ないだけに、模様のある種を見つけると嬉しくなる。虫の楽しみは人それぞれだが、身近にいる虫を愛でるのも面白いと私は思う。

2016年11月20日日曜日

ウシアブ♀


目 Order ハエ目 Diptera
亜目 Suborder ハエ亜目(直縫群) Brachycera(Orthorrhaphous)
下目 Infraorder アブ下目 Tabanomorpha
科 Family アブ科 Tabanidae
亜科 Subfamily アブ亜科 Tabaninae
族 Tribe Tabanini
属・種 genus,species Tabanus trigonus Cocquillet, 1898
ウシアブ♀ Tabanus trigonus Cocquillet, 1898-1-1
ウシアブ♀ Tabanus trigonus Cocquillet, 1898-2-2
ウシアブ♀ Tabanus trigonus Cocquillet, 1898-3-3
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   8月17日採集。体長18ー24mm。ハエ目では複眼が互いに接している方がオス、離れている方がメスの種類が多く、アブ科もそうらしい。この虫を好きという人はどのくらい居るだろうか。私は嫌いである。採集中に周りを飛び回り気が散るわ、いざ刺されたら本当に痛い。…と書いたところだが、実は虻は刺さない。正確には口吻で皮膚を切り裂くらしい。なんと恐ろしい。ちなみに私は採集中に遭遇したらとりあえず捕獲してしまう。でもこんなに大きくてずんぐりしているのに飛ぶのがやたらと速い。世界最速の昆虫はアブの仲間だという噂があるが本当なのだろうか。ちなみに、捕まえるのはほぼ雌である。なぜかというと、私がイケメンだから吸血するのは産卵をするメスだけで、オスは花の蜜などを吸っているらしい。そこら辺がカと一緒で興味深い。